ロッテ百貨店のUnionPay QR決済全店導入が変える訪日客向け購買体験

ロッテ百貨店のUnionPay QR決済全店導入が変える訪日客向け購買体験

ニュースの概要

ロッテ百貨店は9月から、全店舗でUnionPayのQR決済と非接触型のNFC QPSを使えるようにすると発表した。UnionPayの仕組みは、38の国や地域で利用される200以上の決済アプリや銀行アプリに対応している。海外の顧客は、普段使っている自国のアプリを開くだけで支払えるため、旅行先で新たな決済アプリを登録する手間が少ない。店舗側も、国ごとに異なる決済手段を個別に案内する負担を抑えやすい。訪日客の増加を取り込むうえで、支払い方法の多さではなく、レジ前の迷いを減らす設計が焦点になりそうだ。

引用元: がUnionPayのQR決済を全店導入へ、訪日・在日外国人の利便性を強化(Digital Chosun)

分析・見解

国別対応から一つの受け皿へ変わる訪日客決済

これまで訪日客向けの決済は、国や地域ごとに異なるアプリ、カード、電子マネーを店舗が個別に受け入れる形になりやすかった。対応数を増やせば便利になる一方、レジ担当者は利用可否を確認し、端末を選び、処理方法を説明しなければならない。顧客にとっても、自分の決済手段が使えるかを売り場ごとに確かめる必要がある。

今回の導入の本質は、QRコードを増やすことではない。複数の海外アプリを一つの受け皿につなぎ、店舗の案内と現場の操作を簡素にする点にある。対応するアプリが多いほど、海外顧客は使い慣れた環境を維持できる。決済の選択肢を裏側で束ねることで、表側の体験を単純にする発想だ。

売上を左右するのは決済速度より購入中断の削減

百貨店の買い物では、商品を気に入っていても、レジで使える方法が分からない、通信が不安定、認証に時間がかかるといった理由で購入を見送ることがある。特に訪日客は、言葉の違いに加えて、為替や利用限度額も気にする。支払いの最後に不安が生まれると、追加購入や高額商品の決定が止まりやすい。

そのため、導入効果は処理時間の短縮だけで測るべきではない。決済失敗率、レジでの問い合わせ件数、会計途中の取り消し、訪日客の客単価を導入前後で比較する必要がある。例えば、1件の会計が数秒速くなっても、購入を諦める顧客が減らなければ効果は限定的だ。逆に、売り場からレジまでの不安を減らせれば、食品や化粧品などの追加購入につながる可能性がある。

NFC QPSとの併用が店舗ごとの使い分けを生む

QR決済は、顧客がスマートフォンでコードを読み取るか、店舗側が顧客のコードを読み取る方式が中心になる。一方、NFC QPSのような非接触型決済は、対応端末に近づけるだけで処理できる。通信環境や端末の状態によって使いやすい方法が変わるため、両方を用意することは、訪日客の選択肢を広げるだけでなく、障害時の代替手段にもなる。

ただし、手段を増やすだけでは現場が混乱する。重要なのは、店員が「どの国の人には何を使うか」を暗記することではなく、共通の案内表示と短い操作手順で誘導できることだ。レジ画面に決済種別を分かりやすく表示し、読み取り方向や認証待ちの状態を示せば、言語に頼らない接客に近づけられる。

百貨店の導入は商業施設全体の標準を押し上げる

百貨店は複数の売り場、飲食店、催事場を抱えるため、決済の統一効果が表れやすい。衣料品売り場で使えた方法が、食品売り場や免税カウンターでも同じように使えるなら、顧客は店舗内で支払い方法を学び直さずに済む。これは単独店舗の便利さを超え、施設全体の回遊を支える基盤になる。

今後は、決済の完了を起点にした案内も重要になる。購入後に免税手続き、配送、会員登録、別フロアの催事を自然に案内できれば、決済は単なる集金手段ではなく、顧客接点になる。ただし、購買情報や利用者情報を扱うため、同意の取り方、情報管理、返金時の処理を明確にしなければならない。導入の成否は、対応ブランドの数より、現場の運用とデータ管理をどこまで整えられるかで決まる。

ビジネスへの影響

店舗は決済導入前にレジ運用を一枚の手順へ整える

企業が同様の仕組みを取り入れる場合、最初に確認すべきは対応国の数ではなく、現場で迷いが起きる場面である。会計開始、読み取り、本人認証、失敗時の再試行、返金、免税処理までを一つの流れに整理し、売り場ごとの例外を洗い出す必要がある。端末を設置して終わりにすると、店員が決済方法を説明できず、顧客が別の支払いへ戻る可能性がある。

導入前後は、海外顧客の会計時間、決済失敗率、問い合わせ内容、客単価を分けて記録するとよい。曜日、売り場、国や地域、時間帯で差を見ると、端末の台数不足なのか、案内表示の問題なのかを判断しやすい。少数店舗で試験し、改善後に全店へ広げる方法も有効だ。

売上拡大と同時に費用と情報管理を比較する

決済手段を増やすと、手数料、端末費用、保守費用、返金処理の事務負担が発生する。見込まれる売上だけで判断せず、既存のカード決済や現金処理と比べた総費用で評価する必要がある。高額商品では決済成功が売上に直結しやすいが、低単価商品の会計では処理時間や手数料の影響が大きくなるため、売り場別の採算確認が欠かせない。

また、決済情報を販促に使う場合は、顧客の同意と利用目的を明確にすることが前提になる。海外顧客の情報は、問い合わせ窓口や返金方法まで含めて設計しなければ、購入後の不満につながる。便利さを訴えるほど、失敗時に人が支える体制も必要になる。

決済を集客施策と結び付ける段階へ進む

加盟店は、対応開始を告知するだけでなく、訪日前の案内、館内表示、免税カウンター、購入後の配送サービスを一続きに設計すると効果を高められる。例えば、入口で利用可能な決済を示し、売り場では同じ記号を使い、会計後に免税や配送の案内へつなげる。顧客が「使えるか分からない」と感じる時間を減らすことが、値引きとは異なる集客力になる。

ロッテ百貨店の事例から得られる示唆は、国際決済の導入を単独のシステム案件にしないことだ。売り場の接客、売上分析、免税業務、障害対応を一つの顧客体験として扱えば、決済は訪日客を呼び込む入口にも、館内消費を伸ばす仕組みにもなり得る。

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