ニュースの概要
北九州市は、これまで市税が中心だったキャッシュレスでの納付を、市税以外の公金にも広げる取り組みを始めました。対象になるのは、使用料や手数料、各種の負担金など、市役所や区役所の窓口で扱ってきた幅広い支払いです。納付書のバーコードやQRコードをスマートフォンで読み取り、アプリ上で支払いを済ませる流れが想定されています。窓口に行く時間がとれない人や、銀行や郵便局が閉まっている夜間や休日にしか動けない人にとって、手間が大きく減る見込みです。市税だけでなく公金全体へ対象を広げた点が、今回の動きの要になります。
引用元: 市税以外の公金も!便利なキャッシュレス納付がスタート!(北九州市)
分析・見解
市税から公金全体へ、対象を広げた本当の狙い
自治体のキャッシュレス納付は、まず市税から始まることが多くあります。件数が多く、効果が見えやすいからです。国が地方税の電子納付の仕組みを整えたことも後押ししました。
しかし、住民が自治体に支払うお金は市税だけではありません。保育料、公営住宅の家賃、水道以外の各種使用料、手数料、過料などが並びます。市税だけ便利で他は窓口という状態では、住民から見ると一貫性がありません。今回の拡大は、その不ぞろいを解消する一歩と言えます。
窓口の現金処理にかかる、見えにくいコスト
現金の収納は、受け取るだけでは終わりません。釣り銭の準備、日々の締め、金融機関への運搬、帳簿との突き合わせが必要です。人件費だけでなく、ミスや紛失を防ぐための手間も積み上がります。
キャッシュレス化の本当の効果は、住民の利便性よりも、こうした裏側の作業が減ることにあります。入金データが電子で届けば、消し込み(=入金と請求を照らし合わせる作業)が自動に近づきます。職員は、相談対応など人にしかできない仕事へ時間を回せます。
決済手段の増加で、事業者が受ける影響
自治体が導入する手段は、バーコード読み取り型のスマホ決済、クレジットカード、ネットバンキングなどです。この中で、利用者の多い決済アプリが対応するかどうかは、普及の速さを大きく左右します。
日本のキャッシュレス決済比率は、近年4割をこえる水準まで伸びてきました。ただし公金は、民間の買い物に比べて遅れてきた分野です。裏を返せば、伸びしろが大きい領域でもあります。決済事業者にとっては、手数料をどう設計するかが最大の論点です。自治体が手数料を負担するのか、住民に転嫁するのかで、普及の度合いは大きく変わります。
小さな自治体ほど、導入の差が出る
北九州市のような政令指定都市は、予算も人材もそろっています。一方、人口の少ない町村では、システム改修の費用がそのまま重荷になります。
ここで鍵になるのは、共同利用型の仕組みです。複数の自治体が同じ基盤を使えば、費用を分け合えます。今後は、大都市が先行して知見をためし、周辺自治体が同じ仕組みを使う流れが強まるでしょう。収納の電子化は、自治体間の格差を広げるのか、縮めるのか。その分かれ目が、これから数年で見えてきます。
ビジネスへの影響
決済事業者と周辺サービスに広がる商機
公金は、件数が多く、支払いの期限も決まっています。そのため、安定した取扱高を見込める分野です。決済事業者は、自治体向けの窓口対応や、請求書の様式づくりを支援するサービスを用意することで、新しい収益源を作れます。
また、納付書にQRコードを載せる印刷事業者や、入金データを会計システムに取り込む事業者にも需要が生まれます。単に決済を提供するだけでなく、前後の事務まで含めて提案できる企業が有利になります。
一般企業が今から見直しておきたい支払い事務
企業にとっても、他人事ではありません。自治体への支払いが電子化されれば、法人は経理の流れを組み替えられます。たとえば、各種手数料や使用料を、請求書のまとめ払いに乗せるといった運用です。
具体的には、次の三点を点検するとよいでしょう。
一つ目は、現在窓口や振込で払っている公金の種類と件数を洗い出すことです。二つ目は、法人カードや電子的な支払い手段で処理できるものを仕分けることです。三つ目は、領収の記録を電子で保管し、監査に備える方法を決めることです。
導入を急ぐ自治体と組むときの注意点
自治体と取引する事業者は、導入の速さだけで判断しないほうが安全です。手数料の負担者、入金までの日数、障害時の対応窓口を、契約前に確かめてください。
特に、入金の遅れは自治体の会計に直接響きます。仕様の細部が運用を左右するため、小さな実証から始めて、数か月の運用実績を確認してから広げる進め方が現実的です。